本会機関誌の国際誌「Paleontological Research」のオープンアクセス化及び冊子体廃止について
2023年07月24日
オープンアクセス化(以下,OA化)とは,誰でもWebを通じて,無料で自由に論文にアクセスできるようにすることです.公的な研究資金による研究成果は,万人が無料で自由にアクセスできるようにすべきという観点から,公的な研究助成を行うファンディング・エージェンシーの多くが,助成した研究成果について,OA化を義務化・推奨しています (1).古生物学系の国際誌としては,Acta Palaeontologica Polonicaは2005年にOA化し (2),2022年1月からLeathaiaもOA化しています (3).
この世界的趨勢を鑑みて,2013・2014年度第5回評議員会(2015年 6月 25日開催)では,「PRのオープンアクセス化について審議し,オープンアクセスを目指すという基本方針を承認」しました (4).2015・2016年度第5回評議員会(2017年6月8日開催)では「PRのOA化の時期とArticle Processing Charge(以下,APC,著者が支払う投稿・掲載料)額の検討,学会誌の紙媒体の需要調査」を行うこととなりました (5).第168回例会(2019年1月25-27日)で学会誌の紙媒体の需要を調査し,希望者のみ冊子体を配布が半数以上という集計結果を得ました (6).
これらの経緯を踏まえ,2021・2022年度第2回拡大刊行物委員会(2021年12月6日開催)において,OA化の移行について具体的に検討しました.その結果,OA化の移行には,受理済みで冊子体での出版を待っている論文(以下,待機論文)の全ての出版が必要であることが確認されました.この時の待機論文は27編に達していました.PRは季刊型冊子体の出版形態なので,待機論文の出版には1年間を要し,その間にも待機論文が出てきます.また,待機日数について,PRを含めた古生物学系の国際誌計53誌について調査しました.その結果,2021年12月時点で,待機日数はPRが450日で最長であり,オンライン誌では0日というものもあることが判明しました.この状況は,PRのOA化移行への支障になるばかりでなく,著者にとっても大きなデメリットです.そこで,拡大刊行物委員会は冊子体出版の前にオンライン公開する案を提案し,2021・2022年度第2回定例評議員会(2022年 2月 3日開催)で承認されました (7).このPRの公開システムの変更は,2022年年会(金沢大学)において,会員の皆様に周知しました (8).また,新タクサの提唱を含む論文は,オンライン公開の時点でZooBank等への登録が必要になるので,同年会において,登録方法についても紹介しました (8).
2022年8月1日刊行のPR 26(4)から,冊子体発行前にBioOneにオンライン公開することになり,2022年10月には待機論文を全てオンライン公開し,受理後直ちに版組に入る編集工程に移行しました.現時点で,BioOneに公開されている最新論文は,2024年4月1日に刊行されるPR 28巻2号の冊子体に掲載される論文です.PRの待機日数については最新の論文は54日で,古生物学系の国際誌としては,Acta Palaeontologica Polonicaの20日程度とLeathaiaの90日程度の間となっております.
待機論文が解消されたので,遠藤一佳前会長のもとの2021・2022年度第11回常務委員会(2023年6月11日開催)において,学会会計への影響と投稿者の動向への影響などを慎重に検討し,PRのOA化に関して以下の案を作成し,2023年6月29日開催の2021・2022年度第5回評議員会に付議しました.
1.PRをOA化する.
2.APCを無料とする.
3.PRの公開プラットフォームを2025年1月1日付で,BioOneからJ-STAGEに移行する.
4.冊子体はvol. 28 no. 4(2024年10月1日刊行)をもって廃止とする.
上記の案は,同評議員会で承認されましたので,今期は,上記の1-4とそれに伴う会則変更ならびにPRの情報発信力の強化などを順次実施していきます.これらのPRの出版形態の変更につきましては,会員の皆様にはご理解いただきますようお願い申し上げるとともに,皆様からの投稿をお待ちしております.
引用
1. 日本学術振興会 https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/08_openaccess/
index.html
2. Acta Palaeontologica Polonica https://www.app.pan.pl/history.html
3. Leathaia https://www.idunn.no/page/let/author
4. 化石, 98, 68p.
5. 化石, 102, 99p.
6. 化石, 106, 53p.
7. 化石, 111, 52, 53p.
8. 化石, 112, 32p.